脳神経外科コラム

脳神経外科の第一歩を踏み出そうとするあなたへ

初期研修を終え、専門医取得に向けて歩み出す時期は、多くの医師にとって大きな人生の分岐点です。「自分はこの道に向いているのか?」「脳神経外科を選んで本当に大丈夫だろうか?」そんな不安を抱えるのは自然なことです。私たちの領域は、命を左右する場面に立ち会うことの多い診療科です。その分責任の重さもひとしおです。

 

しかし、責任の分、得られる達成感と喜びは格別です。破裂動脈瘤の患者さんが数日後に笑顔を見せてくれる、脳腫瘍の摘出後に家族と再会できる、そんな瞬間は、疲労や不安を一気に吹き飛ばしてくれます。これは研修医のときに誰もが経験し、そして「この道を選んでよかった」と実感する瞬間です。

 

脳神経外科は決して“超人的な器用さ”が必要な世界ではありません。最初から完璧にできる人などいません。顕微鏡下の手術操作も反復練習で必ず上達します。実際、私は料理など全くできませんし、プラモデルも苦手ですが、血管吻合は得意です。

 

脳神経外科学会は、若手が臨床、研究の両面で成長できる環境を用意しています。救急医療の最前線も経験し、同時にロボット支援手術やAIを用いた最新治療にも触れることができます。iPS細胞を用いた神経再生、脳とデジタル技術を癒合するBrain machine interface、国際共同研究など、キャリアを広げる舞台があなたを待っています。

 

もし今、あなたが「厳しいけれど、やりがいがある」「もっと腕を磨いてみたい」と思っているなら、それだけであなたには脳神経外科医の資質があります。必要なのは勇気と情熱だけです。

 

「患者さんの命を救いたい」、「脳や神経の不思議に挑みたい」、「地域に貢献できる医師になりたい」、いずれも脳神経外科で実現可能です。勇気を出して一歩踏み出してみませんか?皆さんと未来の脳神経外科をともに創っていければこれに勝る喜びはありません。

 

福井大学 菊田健一郎