プロになるということ
私は運良く(?)脳神経外科のプロになり、約35年になります。給料をいただくということはプロですから、それに見合った仕事をする必要があります。でも、他人からあれこれ指図されて、それに従うだけでは嫌になりませんか? 残念ながら、年齢を重ねて立場が変わっても、内容は異なるけれども何らかの指図を受けるのは同じです。
先日、若い先生より脳神経外科医を続けているモチベーションは何かと聞かれ、他人からの指示とは別にその時その時に自分なりの小さな目標を持つことだと答えました。その目標は何でも良く、特定の技術の習得、研究成果、ヨーロッパでの学会発表、今なら教室の若手の活躍など、その都度、変わってきました。
何事も初めは進歩が早くて楽しいですが、そのうちに賭けた時間の割に上達が遅くなり、少しの差に見えることが実は非常に大きな差であることが分かるようになります。そこで次々に違う分野に移ると、また新しい楽しみを経験できますが、常に何らかの分野の初心者ということになります。もうひと頑張りして相手の期待通りの成果を挙げられると、プロの仕事をしたことになり、期待以上であれば超一流のプロと思っています。
「10%の才能、20%の努力、30%の臆病さと40%の運」、これは昔、読んだ有名な漫画「ゴルゴ13」のなかで、超一流スナイパーであるゴルゴ13が述べた一流のプロの条件です。私の解釈では、これは技術の裏付けだけではなく、「ここぞ」という時(例えば手術前)には念入りに情報を集め、もしもの時の危険回避などをしっかり準備することで運を味方につけられる、ということであり、脳神経外科医にも通じると思っています。運と神頼みは同義ではありませんが、神前で目標を明確にすることも運を味方につけることに役立つかもしれません。運を味方につける努力を怠らず、若者らしい「根拠のない自信」を持ち続け、進んで欲しいと思います。
三重大学大学院医学系研究科脳神経外科
鈴木秀謙