脳神経外科コラム

私、脳神経外科医

 桜の季節が近づき、大学病院の渡り廊下に学内向け新人勧誘のポスターが並びました。様々に趣向を凝らし、それぞれの科の魅力を伝えようとしているようです。そして、私たちが今年のポスターに書き入れたのは『私、脳神経外科医』というメッセージでした。

 

 神秘的で、文字通り中枢にあって、それ自体が美しいなと思える脳。直接脳に触れることで人を治療し、研究し、そのなかで自分が成長するとともに後輩も育てていく喜び。繊細で、緊張感の高い手術。救命救急の現場にあって脳も意識障害も怖くないという自信。血管障害、腫瘍、小児神経、外傷、脊髄脊椎、てんかん・機能外科に代表される幅広いサブスペシャルティ―。そして、脳の疾患とその不安に苛まれた患者さんを救うこと。『私、脳神経外科医』、そこを目指した全員が胸を張れる、そんな魅力にあふれた領域です。

 

 ところで医師働き方改革は2024年度からその取り組みが加速されます。時間外労働の制限、コメディカルや事務職とのタスクシェア・タスクシフト、ICTによる効率化。実際のところどうなっていくのか正確なところは想像がつきにくいけれど、徐々にではあっても、良い方向に進めなくてはなりません。『私、脳神経外科医』。もし脳や脳の治療に魅力を感じたら、それを大切にしていただきたいと思います。いつの時代も変化はあるけれど、人生の多くの時間を賭ける仕事には、それを選んだ自分だけの理由があるべきなのだと思います。心身の健康やプライベートな時間と同様に、大切な価値のある時間を脳神経外科医として過ごせるよう、働く環境を整えていきたいと思います。

 

横浜市立大学 脳神経外科

山本哲哉