脳神経外科コラム

医学部選択実習生・初期研修医に聞く

 本コラム原稿の執筆依頼をいただいた時、ちょうど当科に選択で臨床実習に参加している医学部5年生と選択研修で研鑽を積んでいる初期研修医(1年目)がいましたので、彼らに脳神経外科実習、研修を選択した理由、実際に実習、研修してみての印象などについて聞いてみました。彼らに了承を得て本稿では彼らの意見を掲載させていただくことにしました。

 

医学部5年生:脳神経外科で1ヶ月間実習させていただきました。以前から脳神経外科に進みたいとは考えていたのですが、漠然としたイメージしかなく、実際にどのような検査や治療を行っているのかをじっくり見てみたく選択しました。1ヶ月の間、多種多様な治療を見ることができました。脳動脈瘤であればクリッピング、コイル塞栓、フローダイバーターを見ることができ、腫瘍の手術でも神経内視鏡下での手術や覚醒下手術も経験でき、非常に充実した実習となりました。脳神経外科の手術はとにかく長時間かかって大変という想像をしていたのですが、現代ではそこまで長い手術はあまり無いと知り安心しました。もともと脳腫瘍の手術に興味があったのですが、最近は低侵襲で治療ができる血管内治療も魅力的に感じるようになり、まだまだ何を専門にしたいか決めきれない状況ではありますが、今回の実習を通して脳神経外科に進みたいという想いは確固たるものとなりました。

 

初期研修医(1年目):私は学生実習がきっかけで脳神経外科の道に進もうと思ったので、初期研修で脳神経外科を選択しました。初期研修医として脳神経外科を回って、改めて感じた脳神経外科の魅力について述べさせていただきます。脳神経外科は高度な技術や豊富な知識、経験を必要とするため、学ばなければならないことは多いと思いますが、その分、日々成長を感じることができます。専門医取得後のサブスペシャルティーの選択肢も多く、経験年数が上がっても新たな学びがあることはとても魅力的であると感じました。また、脳神経外科の専門医制度は内科や外科と異なり、初期研修終了後に他科をローテーションする必要がなく、医師3年目から脳神経外科で働くことができるため、早く専門を身につけたい、早く最も興味のある科目で働きたいと考える方には向いている診療科だと思います。そして、脳神経外科の疾患は、初期対応から術後の外来まで自科で診ることが比較的多いため、担当した患者さんの経過を全てみることができることも医師としてのやりがいにつながると思いました。脳神経外科での研修は忙しい日が多かったですが、楽しく非常に充実していました。QOLは、単なる勤務時間の長短ではなく、日々の充実感によって大きく変わると痛感したため、研修を通じて脳神経外科を志望する気持ちはより強いものとなりました。

 

 本コラムをご覧になっている医学部生や初期研修医の皆さん、医学部臨床実習や初期研修において脳神経外科は必修ではない施設も多いと思いますが、サブスペシャルティーの多い脳神経外科を選択して是非回ってみてください。

 

卒前卒後教育検討委員会委員

東邦大学医療センター大橋病院脳神経外科

岩渕 聡