脳神経外科コラム

脳神経外科のすすめ 2

2022.08.01のコラムの続編です。

このコラムを開いた医学生・初期研修医の皆さんは、何らかの形で脳神経外科に興味をお持ちの方だと思います。脳そのものへの興味、脳や神経の疾患への興味、脳神経手術への興味、脳神経外科医そのものへの興味、様々だと思います。

脳は何と言っても特別な臓器であり、21世紀の現代においてもまだ神秘に満ちています。その脳に実際に触れて手術を介して手を加えられるのは脳神経外科医だけです。これは紛れもない事実ではありますが、このことを突き詰めて考えてしまうと、皆さんは脳神経外科の扉を叩いたとしても中に入ることをためらってしまうかもしれません。皆さんが現在考えていること、迷っていることは、われわれシニア世代の脳神経外科医も、若かりし頃には同じことを考え、迷い、悩み、そして、扉を叩いて中に入っていったわけです。中には特別な医学生や優秀な研修医がいたでしょうが、それは一握りであり多くは皆さんと全く同じ普通の若者でした。

 

一方で、われわれが脳神経外科を学んだ平成の時代は、脳神経外科では長時間労働が当たり前でした。それを別に苦とも感じませんでしたし、脳神経外科の技術や知識が着実に身についていくことは望外の喜びでした。そういった脳神経外科の固定観念は現在まで引き継がれてしまい、皆さんもそのように考えて躊躇している向きも少なからずあると思います。人一倍気力や体力が必要といった先入観があるのではないでしょうか。しかし、時代は働き方改革真っ盛りです。2024年4月からは長時間勤務や連続勤務超過は法的に規制されると同時に、それに備えて2年以上前から現場では改革が始まり浸透してきています。特に夜間の医局の様子などは平成時代とは一変し、労働環境は著しく改善しています。個人的に物足りなさを感じるのは事実ですが、時代は大きく変化していますのでご安心ください。もちろんかつてと同様に高みを極める環境も維持できていると信じています。

 

若い皆さんが脳神経外科を選択し、一緒にこの道を歩めることを切に願います。

 

東京女子医科大学 脳神経外科学講座

川俣貴一