未来人からの「いいね!」
さしたる深い考えもないままに出身大学の脳神経外科の門を叩き20数年、専門医を取得し現在はレジデントとして研修していた大学病院に勤務しています。同じ病院で働いているとその頃に担当した患者さんやご家族と外来でお会いすることもあります。生まれたばかりだった赤ちゃんはすっかり大人です。しかしそれでもまだ20歳そこそこ。これからまだ様々なライフイベントを経験していくことでしょう。
業務改善のための計画→実行→評価→改善のPDCAサイクルがよく知られています。手術を例に挙げるなら、適応を決め必要な検査を行い方法について検討し実行する。術後は入院なり外来での患者さんの経過から様々なことを学び計画・実行が妥当だったかを検討します。術後数か月から数年くらいの経過を見ることが多いのですが、私のサブスペシャリティは小児神経外科です。20年と言わず数十年の経過を見ることで気づくこともたくさんあります。赤ちゃんだった患者さんの20年後を見てもまだ足りないかもしれません。ただどんなに頑張っても自分が見られる期間には限りがありますし、同じ病院でずっと働き続けることはほとんどありません。評価するのは自分ではなく、未来の脳神経外科医であり患者さん、家族です。
ソーシャル・メディアなどの普及に伴い知らない人からも「いいね!」をもらって、これまでは自分の中だけでひっそりと温めていた承認欲求を満たすことのできる時代となりました。脳神経外科医も人間なので手術や研究などで「映える」結果を得たり、お褒めの言葉をいただいたりすると大変励みになるものです。ただ、ともするとすぐに結果を得ることを求めがちです。すぐに結果は見えないかもしれませんが、遠い未来を想像する小児神経外科のロマンに気づく若い先生が増えてくれることを期待しています。
筑波大学医学医療系脳神経外科
室井 愛