脳神経外科コラム

研修医の情熱が、大学入試要項を変え、脳神経外科を変える

大学入試の多様化に伴い、地方大学では地域枠が設けられるようになり、佐賀大学では大学生修学資金を6年間貸与される県推薦入学特別入試が行われています。

入学者は卒業後県内で、特定診療科での従事が求められます。佐賀県の意向で以前は4つの診療科しか選択肢がありませんでしたが、修学資金を貸与された初期研修医の中で、脳神経外科医を希望する者が現れました。そこで、どうしたら彼を脳神経外科医にすることができるかと考えました。大学附属病院の院長、連携施設の病院長などに協力を仰ぎ、県に機会があるたびに働きかけました。すると、行政は脳神経外科を含む複数の診療科を新たに選択肢に加えてくれました。初期研修医の情熱が、関係者を団結させたことで行政が動き、大学入試要項も書き換えられました。その後、2年連続で県推薦枠の研修医が我々のところに入局し、専門医を目指しています。

 

近年の研修医はZ世代と言われていますが、現在指導的立場にいる我々世代が研修医であったころも、当時の指導者からは「近頃の若い者は」と言われたものでした。したがって、今は若い皆さんも、今後年を重ね、経験を積み、指導者として活躍する頃には、「近頃の若いα世代の者は……」と歴史を繰り返すのだろうと思います。

一方、我々が取り扱う臓器の脳や神経疾患は、まだまだ分からないことが多く、フロンティアはこれからもずっと続いていくものと考えられます。

脳神経外科は、脳に直接触ることのできる唯一の診療科で、アイデア次第で最先端のさまざまな治療など技術開発が可能です。ひとりでも多くの研修医や学生に最先端を走る脳神経外科に興味を持っていただき、デジタルネイティブ世代の良い意味での特性を活かした新たな息吹を、脳神経外科に吹き込んでほしいと心から願っております。

 

佐賀大学医学部脳神経外科

阿部竜也