脳神経外科コラム

医学生、研修医諸君!

将来、脳神経外科医になろうかどうしようか迷っている医学生や研修医から受ける質問は、おおむね、「手先が器用でないと出来ませんか?」「体力がないとダメですか?」「女性だと難しいですか?」に集約される。いずれもNo!である、とお答えしている。

 

私は平成2年の卒業で同期入局は5人いたが、部活動、趣味嗜好、性格は全くバラバラであった。各々に脳神経外科医としての適性があったのかどうか、?であるが、皆60歳近くになっても、それなりに臨床医として頑張っている(と思う)。私自身、家族のなかで最も不器用と言われて育ち、そのことがずうっとコンプレックスであったが、コシノジュンコさんの言葉をおかりすれば、時として「コンプレックスは武器になる」と思う。日本を代表する盆栽作家で、文化庁長官表彰を受賞した小林國雄氏のつくる盆栽は一鉢一億円の値がつく作品もあり、まさにartである。この名匠は数多くの弟子を育ててきたが、伸びる人の共通点として、素直、仕事が好き、努力を積み重ねる、の3つを挙げている。器用で要領のよい子はあまり長続きせず、逆に不器用でへたくそな子の方が必死になって努力するから伸びる、とのこと。

 

確かに脳神経外科は女性の少ない科ではあるし、長時間の手術や夜間緊急手術も多くて体力が必要とされる。ただし、サブスペシャリティーの中には、女性特有の細やかさが生かされる分野も多い。また、今後の働き方改革に伴い多職種連携、タスクシフティングが進み、その恩恵を他の科よりも受けることが多いと思われる。 

 

以前、「神の手を持つ脳神経外科医」がマスコミによく取り上げられていた頃、脳神経外科医になりたくて、医学部に入学したという学生によく遭遇した。また、我々よりも前の世代の先輩医師のなかには、ベン・ケーシー(1960年代に放送されたアメリカのテレビドラマの主人公の脳神経外科医、『スクラブ』以前に外科系の医師がよく着用していた白衣『ケーシー』の由来)にあこがれて脳神経外科医になった方も多いという話をお聞きする。

 

高邁な志をいだく必要はないのかもしれない。個人的には、画像や術野映像をみて、artを感じる人は脳神経外科に向いていると思うが・・・

 

鳥取大学医学部脳神経外科

黒﨑雅道