脳神経外科コラム

医学生、研修医の皆さま

脳神経外科医は脳に直接触れることを許された、唯一の専門医です。

 

脳神経外科の魅力は、まず脳の美しさにあります。解剖実習で見た脳とは違い、実際の脳は鮮やかな色彩を持っています。とりわけ小脳と脳幹の間にある小脳橋角部は「宝石箱」とも呼ばれ、次々に目の前に現れる神経や血管は、息を呑むほどの美しさです。

 

そしてなんと言ってもその魅力は、他の追随を許さない手術技術の精緻さにあります。脳血管の吻合ではシャープペンシルの芯ほどの細さの、0.5mmと0.5mmの血管同士を繋ぎ合わせます。100ミクロン間隔に10針を入れる作業は、ミリ単位ではなく「ミクロン単位」の職人技です。これを目にした若者に「君もやってみないか」と問うと多くのものが目を輝かせます。

 

専門分野が広いことも特徴です。脳血管障害、脳腫瘍、外傷などに加え、最近では脳の機能を調節する機能外科が発展しています。てんかん、不随意運動、疼痛に対して脳刺激療法などが進歩しており、将来的には精神科的疾患、記憶などにも介入できる可能性を秘めています。

 

治療手段も技術革新が進んでいます。心臓血管外科とは異なり、脳神経外科医は手術もカテーテルも自ら行います。現在、外科や婦人科でDa Vinciの導入が進んでいますが、脳神経外科でも従来の手術顕微鏡に加え、内視鏡、3D外視鏡などの新しい治療手段が続々と登場しています。

 

脳神経外科の専門医になるためには途方もない量の勉強をしなければなりません。手術は細かく、自分には無理なんじゃないかと思う方も多いでしょう。しかし私たちもかつてはそうだったのです。努力は必要ですが、やってやれないことはありません。

 

脳神経外科手術は確かに、高い集中力と精神の持久力が必要です。しかし患者さんのために全力を尽くす「充実感と達成感」は、何ものにも代え難いものがあります。
皆さんも、私たちとこの充実感、達成感を共有しませんか?

 

 

福井大学医学系部門脳神経外科学分野
教授 菊田健一郎