脳神経外科コラム

どう感じた?-令和の初期研修医が脳神経外科を選んだ理由

ディズニーでは、テーマパークのデザインや設計をする専門担当者を “イマジニア(イマジネーション+エンジニア)”と呼ぶそうです。

 

膵臓癌での退職と死を前に、夢と仕事のつながり、家族や仲間について語った著書「最後の授業」。カーネギー・メロン大学のバーチャルリアリティ(VR)の権威-ランディ・パウシュ教授が幼いころに抱いた夢-無重力を体験する、NFLの選手になる、ディズニーのイマジニアになる-は、どれも現実的とは言えません。しかし、どの夢にもVRの専門家として関わり、楽しみ、達成感を得ました。“イマジニア”にはなりませんでしたが、ディズニーのプロジェクトにも実際に加わり、幼いころの夢は確かに実現されたと、読者は実感することができます。VRを専門にはしましたが、将来需要があるとか(FB社が∞Metaになる20年も前の話です)、儲かるとか、偉くなれるといった計算ではなく、“dream-driven”の要素が仕事を支え続けます。“感じたもの”は、頭で計算されたものと違って、長い時間の中で忘れかけてもまた浮かび上がって、少し形を変えることはあっても、障壁に際しても強いモチベーションとなります。

 

脳神経外科に入局した後期研修医の面接記録から、彼女・彼らが脳神経外科を選んだ理由を見返してみました。直接脳に触れて仕事がしたい、脳の美しさに魅せられた、神経生理が魅力的だった、緻密・繊細な手術がいい、患者さんが劇的に良くなった、家族の脳疾患、扱う範囲が広く奥深くてずっと興味を持っていられそう、腫瘍に未解決の領域が多い、命と向き合える、外科志望だがイメージは脳。それぞれ異なりますが、こどもの夢のように素直で、それぞれの感性が大切にされています。必ず、長い時間の中でも失われず、障壁に打ちかつモチベーションになると期待します。『脳への興味』を感じたら、ぜひ一度、脳神経外科を見に来られてはいかがでしょう?

 

 

卒前卒後教育検討委員会委員
山本哲哉