脳神経外科コラム

はかり知れない可能性

1960年代、手術用顕微鏡の導入によるマイクロサージェリーの普及により、脳神経外科の歴史は大きく発展し、同時にそれまで外科の一部であった脳神経外科は独立した講座として各大学で続々と開講し大きな転換が図られました。わが国の脳神経外科は、専ら手術に特化している欧米の脳神経外科とは異なり、脳・神経に関わる全般的領域を扱う診療科です。このような背景から、現在脳神経外科は医師臨床研修制度の19の基本診療科の一つとなっており、専攻医として必須とされる基本領域の専門医取得が可能です。

 

脳の重さは体重のわずか2%ですが、酸素消費量は全身の20%、脳血流量は心拍出量の15%とこんなぜいたくな臓器は他にありません。しかし、脳科学はまだまだ未知なことだらけです。したがって臨床脳科学ともいえる脳神経外科は、これからもはかり知れない可能性を有しています。頭部外傷、脳血管障害、脳腫瘍の他、脊椎・脊髄外科、末梢神経外科、小児脳神経外科、機能的脳神経外科、てんかん、認知症、リハビリテーション、画像診断、定位放射線治療など様々な専門領域を有し、神経保護、再生医療をはじめ様々な基礎研究の分野でも多くの脳神経外科医が活躍しています。キャリア選択の可能性が広がることはまさに多様性の時代にマッチしているといえます。

 

脳科学に興味がある人であれば、専攻医修了の頃には必ず自分に合った専門領域が見つかります。その仕事を続けて行くことこそが、やりがいであり、未知なことが多い分、疑問に思ったことから新しい発見や新たな治療が生まれるかもしれません。あなた自身のはかり知れない可能性を脳神経外科の道に注いでみませんか。

 

 

卒前卒後教育検討委員会委員
東邦大学医療センター大橋病院脳神経外科
岩渕 聡