脳神経外科コラム

脳神経外科の魅力

 脳神経外科というと、脳血管障害や脳腫瘍の手術のイメージで語られることが多いと思いますが、実に多彩な専門分野(subspeciality)があります。脳血管障害や脳腫瘍に加え、機能神経外科、てんかん外科、脊椎脊髄外科、小児神経外科など、同じ診療科かと思えないぐらいの多様性を持っています。私の大学にも、脳血管障害や脳腫瘍に興味を持って脳神経外科の門を叩く若者だけではありません。小児科を志望していた医師が、小児神経外科に出会い、発達期の脳に関わる脳外科医療に魅了されて進路を変えた例もあります。また精神科志望だった医師が、てんかんの外科治療という選択肢を知り、脳神経外科医になったこともあります。脳神経外科は、もともとの興味を生かしながら新たな道を切り拓ける懐の深い分野です。自分の興味がどこにあっても、それを受け止める専門分野が必ず存在します。
 もう一つの脳神経外科の大きな魅力は、「構造」だけでなく脳の「機能」に直接向き合えることです。運動機能、感覚機能、言語機能やそれ以外の高次脳機能を常に考えて治療を行う必要がありますし、最近は静的な局所の脳機能だけではなく、さまざまな動的な脳機能ネットワークの重要性が言われています。てんかん外科やパーキンソン病に対する脳深部刺激療法などの機能神経外科では、神経回路そのものの制御を目的とします。症状の背後にあるネットワークを理解し、適切に介入することで、患者さんの生活は大きく変わります。
 高次脳機能や意識、運動、言語といった人間の根幹に関わる領域に携わる責任は重いですが、その分、改善を目の当たりにしたときの喜びは格別です。基礎神経科学と臨床が密接につながるこの分野は、とてもワクワクする分野でもあります。脳神経外科は一つの専門にとどまらず、多様な志を受け止める大きな器です。自らの関心と情熱を重ね合わせる場として、脳神経外科の仲間になることを願っています。

 

九州大学大学院医学研究院 脳神経外科 吉本幸司