脳神経外科Q&A

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あなたの「?」に、若⼿専⾨医と
ベテラン専⾨医が答えます!

Q. 脳神経外科に向いているのは、どのような⼈でしょうか?

若⼿専⾨医
脳や神経に興味がある⼈、責任感があり真⾯⽬な⼈、そして冷静な⼈ですね。
ベテラン専⾨医
本⼈が「やりがい」を持てるという点では、脳、脊髄、神経など、その疾病に興味がある⽅が向いていると思います。

Q. 脳神経外科医はとても忙しいと聞いていますが?

若⼿専⾨医
忙しいですが、慣れてきます。チーム医療を⾏っており、年齢など⽴場によって忙しい内容が変わってくるようです。勤務施設によっても忙しさはさまざまだと思います。
ベテラン専⾨医
忙しさは勤務する施設や担当する領域により異なりますが、4〜5割の専⾨医は「やや忙しい」、2〜3割は「⾮常に忙しい」と述べています。領域でいえば、⾎管系や外傷系では救急患者が多くあわただしく、脊椎や機能系外科、脳ドックではそれが少ないので⽣活は規則的になります。これまでは社会的必要にせまられ、救急関係の領域が発展してきましたが、今後かなり変貌するものと⾒込まれています。脳神経外科はかつて喧伝されたような重症、緊急⼿術、⻑時間⼿術の時代から、軽症、予定⼿術、低侵襲短時間⼿術の時代に様変わりしつつあります。⽣活の中で、休暇や余暇も重要視される傾向にあります。

Q. ⽇本では脳神経外科医が不⾜しているのでしょうか?

若⼿専⾨医
外国と⽐べれば、⽇本の脳神経外科専⾨医の数は多いようです。しかし、⽇本では外国と異なり、診断から⾎管撮影などの検査、外傷や脳卒中の治療全体から頭痛、めまいなどの初診患者さんまで「神経の専⾨家」として幅広く対応しています。中⼩規模の病院では、特に少ない⼈数でカバーしており、脳神経外科医の不⾜が⽬⽴つのが現状です。
ベテラン専⾨医
不⾜しています。全国の5〜6割の施設では、脳神経外科医が「不⾜」、1〜2割では「極度に不⾜」し、「ほぼ適正」とみなされる施設は2〜3割です(平成17年の学会調査)。⽇本は世界でもまれなほど医療が充実し、脳神経外科が発展した国です。このような体制を維持し、さらに前進させるには、なお多くの⼈材が必要です。

Q. 術者として⼀⼈前になるのには、何年くらいかかりますか?

若⼿専⾨医
最近は⼿術⼿技も⾼度なものを要求されており、何をもって⼀⼈前の術者とするか判断するのは難しいですが、脳神経外科医として最低限の緊急処置や救急⼿術は5〜6年で概ね可能になります。
ベテラン専⾨医
穿頭術など簡単な⼿術では研修初期から術者となります。4年間の研修終了時には、⼀般的開頭法がマスターできます。顕微鏡⼿術は研修中に修練をはじめ、研修後期に⽐較的安全な⼿術の術者となり、卒後10年くらいで通常の顕微鏡⼿術がまかされるようになります。

Q. 脳神経外科医は⼥性にも向いているのでしょうか?

若⼿専⾨医
実際に⼥性で活躍されている⽅も多く、可能だと思いますし、最近は卒後20年までの女性会員の割合は全体の約12%と増えてきています。顕微鏡や血管内手術など繊細な手術が多く、⼥性の⽅が向いているとも言えます。女性の先輩が相談に乗ってくれる機会もあります。
ベテラン専⾨医
もちろんです。脳神経外科学会は男女問わず若手医師を受け入れています。体⼒よりも頭脳プレーが⼤事ですから、⼥性、男性、変わりありません。2021年秋時点では⼥性の脳神経外科専門医は約440名にのぼり、特に最近の女性の若手専門医の台頭には目を見はるものがあり、皆、活躍されています。

Q. 脳神経外科医のワークライフバランスはどうなっていますか?

若⼿専⾨医
「ライフ」の内容が人それぞれなので、一律には言えませんが、専門医の取得と子育ての時期が重なる場合など、自分がどうしたいか、しっかり考えたうえで、まず家族内で、そして職場の上司や先輩とよく相談してバランスを取っていくべきだと思います。コミュニケーションによって解決できることは多いと思います。
ベテラン専⾨医
学会ではダイバーシティ推進委員会を中心に、ワークライフバランスに関する支援を検討しています。取り組みの一環として、学会開催中には託児施設を設置したり、調査を実施して、結果を共有することで、女性医師のニーズや課題を把握して対応に努めています。

Q. 専⾨医試験は難しいと聞いていますが?

若⼿専⾨医
脳を含めた神経系を扱うため多くの知識が要求され、ある程度のハードルが⾼いのは仕⽅ないですし、そうあるべきでしょう。
ベテラン専⾨医
専⾨医試験は中⼩規模の病院の部⻑が務まるレベルを基準としています。診療責任者としての資格ですので、それなりに難関です。ただし、学会認定の施設で研修し、受験準備された⽅は、最終的にほとんど合格します。この資格は研修を堅実にこなし、独⽴して脳神経外科の診療ができる知識と診療能⼒を備えた証として⾼く評価されます。

Q. 脳神経外科の⼿術は⼿先が器⽤でなければできないのでは?

若⼿専⾨医
箸が使えれば、ある程度の⼿術には差し⽀えないのではないでしょうか。器⽤さよりも、知識と計画(治療戦略)、着実さが重要なようです。たとえば野球の守備でいうと、ファインプレーよりもエラーしないことが⼤切なのと同じですね。
ベテラン専⾨医
「⼿先が器⽤」なのはよいことですが、本当に重要なことは「頭が器⽤」なことだと思います。疾患と病態、治療オプションを熟知した上で柔軟に考え、正しく判断し、注意深く治療する必要があります。このような知⼒や技術を養うのが「脳神経外科医の研修」です。

Q. 脳神経外科の研修はきつくありませんか?

若⼿専⾨医
緊急呼び出しも多く、⾁体的にきつい⾯もありますが、特別頑強な体が必要なわけではありません。むしろ診断や治療法などの進歩が著しく、⽇々勉強することが重要です。「やりがい」はあると思いますよ。
ベテラン専⾨医
他の外科系研修と同程度だと思われます。研修の内容は施設によっても差があります。研修医によると「ハードな施設」ではそれなりに豊富な経験を積むことができ、逆に「楽な施設」では丁寧に指導され、勉強する時間もあり、⾝につくことが多いとのことです。そこで、複数の施設をローテーションする研修プログラムを⽤意しています。いずれにしろ研修は患者さん中⼼という診療習慣を⾝につける⼤切な基盤となります。

Q. 脳神経外科をやめようと思ったことはありませんか?

若⼿専⾨医
他の専門分野へ移っていった人もいらっしゃるようですが、自分が何をめざしているのか、いつも自問するようにしています。
ベテラン専⾨医
医師の専門性の選択はそれぞれで、途中での進路変更も可能ですし、脳神経外科の経験を他の分野で活かしている人もいます。しかし、続けたいのに続けられないと思った人はまず上司や先輩に相談してみてください。

Q. 脳神経外科で開業することはできるのでしょうか?

若⼿専⾨医
可能ですし、実際に開業されている⽅もいらっしゃいます。普通に勤務していると頭痛などに対する内科的な知識も得ることができますよ。(右図)
ベテラン専⾨医
脳神経外科の開業は「意外な⽳場」といわれます。専⾨医の1割くらいが開業しています。⼀部の有床診療所を除くと本格的な⼿術は⾏わず、神経系疾患についての診断や保存的治療が中⼼となります。専⾨的知識と実際の⼿術経験が患者さんからの信頼につながっているようです。
日本脳神経外科専門医の状況 グラフ

Q. 脳神経外科医になって、いいと思えることは何でしょうか?

若⼿専⾨医
興味のある脳・神経やその機能に、直接的にも間接的にもあらゆる⽅⾯からアプローチすることが可能なこと。⽇本では脳・神経の分野で脳神経外科の占める割合が⼤きいこと。新しい治療法を開発できること。⼈を助けているという実感が⼤きいこと。つまり、⼤きな「やりがい」があるということだと思います。
ベテラン専⾨医
脳神経外科は、⼈の、⼈としての存在と活動の原点である脳や脊髄を直接みて、ふれて、治す分野です。そのためつねに神経科学や医療技術の最先端とともに歩み、進歩しており、これを実感できることは⼤きな喜びとなります。また対象が広く、神経学はもとより内科、⼩児科、外科、産婦⼈科などを含めた全⾝の疾患や機能と関係しています。診療と研究、勉学を通して、多くの⼈に信頼され、⼈間を深く考え、深く知ることができます。